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"とらうま"を抱きしめて [サマリー]

2007-03-21(Wed)春分の日
■【山桜】と競技会デビューを無事果たしてきた。
いまその意味の重さをひしひしと感じる。
と同時に、デビューのために尽力して下さった方々への感謝の気持ちも
改めて深くなっていく。

■2005年4月、乗馬を始めて8ヶ月目。
私は「下手クソの最低、危険人物でクラブ出入り禁止、どんくさいオバさんはいくらやってもうまくならない」と情けなさで胸が張り裂けんばかりの状態だった。
もともと運動神経は鈍く、体力気力も不足ぎみ、中年太りに差しかかりいい所は何もなかった。
2005年2月の103鞍目に起きた落馬。
かかった【山桜】から落ちたのだった。
手ひどい打撲からようやく回復したところで、今度は2件続けての馬の転倒事故。
「またあんたか」という突き刺さる視線が痛かった。
罪悪感からクラブに足を踏み入れることのできない状態が続いた。
「どんくさい私だとクラブや馬に迷惑をかけてしまう」
「やっぱり、スポーツは苦手なのよね」
当時、サービスが始まったばかりのブログで乗馬日記を書き始めたものの
すぐに更新停滞、意気揚々とブログ公開したことを悔やんだ。
■「落馬して怖くなったので」
「落馬して止めちゃった人の話はよくあるし」
「骨折や半身不随になるリスクもある」
「しかも、乗馬はお金もかかるし」と乗馬をやめる体裁のいい理由は沢山あった。
劣等感と挫折感と自己不全感と馬の大きな動きに対する恐怖で、身を引き裂かれるような思い。
そして、それを覆い隠すように
「やっぱり無理」「高望み」「取りあえず初級までいったのだから」と
あきらめ、言い訳して合理化し、些細なことにしてしまおうとする自分もいた。
■でもね、そんな時。
「きっと駆歩できるようになるから」
「私と同じような人がいるなんて、驚き」と
ブログにコメントしてくれた方々がいた。
最も傷ついて苦しんでいる時に、届いた声。
涙が出て止まらなかった。
そして、
「ここでやめたら挫折した経験のままだ」
「死ぬまで『昔乗馬をしたけどやめた』という思い出話だけしかできない」と
思えるようになった。
 ー やめるわけにはいかない ー
上達する保証は何もなかった。
「落馬してから怖くてダメなんです」と言ってみたところで、特別なレッスンがあるわけでなくトラウマを自分で直してく術を探らなければならなかった。
ブログは「おばさんが下手なまま悪戦苦闘する記録」
「さらなる挫折に向けての実録」になる覚悟で続けることにした。

■自分に対する自信のなさ、馬の大きな動きへの恐怖は、
「リラックスして馬の動きについていく」という乗馬の基本を完璧なまでに阻害した。
口の悪い教官に、
「やるべきことはもう教えたんだから、あとは気持ちの問題」と苦笑された。
年若い教官には、
「どうしてできないのか理解できない」とばかりにダメ出しされた。
この時ばかりは「お金を払ってまで自尊心を踏みにじられるなんて」と感じた。
そして、ようやくわかってきた。
「誰か私を助けて」
「どうすればうまくなるか手取り足取り教えて」と他力本願でいることの不毛さを。
■自分ができる所まで戻って納得するまで乗ろう。
「〜ができた」と喜ぶのではなくて、
「ああ、こういうことだったんだ」という気付きを大切にしようと思えた。
時を同じくして、天翔る馬のような気持ちのいい乗り心地を名馬たちからプレゼントされて「もう一度この乗り心地を味わいたい」と強く望むようになった。
■馬の手入れがメインで、騎乗はビギナークラス。
「あの素晴らしい乗り心地をもう一度」とそれだけを暗闇の先の光として続けてきた。
詳細は、ブログの騎乗記録の通り。

■【山桜】とは落馬の打撲傷が治った時点で、
「あんな危険な馬をどうしてクラブは置いていくのだろう」とか
「新馬あがりの馬に乗せるのに新米のインストラクターがつくなんて」と
クラブの対応を批判がましく思ったのだが、
馬自体を非難する気持ちにはなれなかった。
「危ない馬はお肉になっちゃえ」とちらりとかすめた考えを慌てて取り消して、
「私がもう一度乗れるようになるまで、絶対に!! 待っていて !!!」
「どこにも行かないでいてね !!」と馬房の前で語りかけていた。
■とは言え、「暴走する、物見して走り出す」という話を聞けば、
「やはり危険な馬だったのだ」と自分の落馬を正当化してしまうし、
同じ部班レッスンに彼が出てくれば「一緒のレッスンはいやだなあ」とつぶやく。
【山桜】を濃い色眼鏡で見ていたことは否めない。
■「そろそろあの馬にも乗ってみませんか」
「軽い扶助で駆歩が出るし、一定のリズムで走ってくれるからいい馬よ」と
言われだしたのは1年半後。
いまだに駆歩でのバランスが悪く、普通の馬では駆歩の継続が難しかったのだ。
何かの都合で配馬の入れ替えがあった時に【山桜】にあたった。
そして、どの馬よりも騎手のバランスの悪さに耐えて
駆歩を続けてくれる彼に驚いた。
【山桜】のおかげで駆歩を続けていられる、斜めに手前を換えができてしまうことに感謝した。
ようやく関係修復。
彼を目の敵にようにして距離を置いてきた自分と決別。
103鞍目の落馬は、心の棘としての形を失って単なるひとつの出来事になった。
■400鞍目の騎乗が【山桜】に本格的に乗りだす端緒だった。
「もちぇさん、競技会に出てみませんか?」と4%先生に声をかけられたのだ。
先の運動会できちんと経路も踏めない状態だっただけに、
「いつかリベンジをしなくてはいけないだろうな」と思っていた。
「私は楽しんで騎乗できればそれで十分」という台詞をつい使いたくなるが、
そのなかには卑下や逃げという毒が含まれている。
競技会まで6週間しかない。
3月中旬、卒業式の頃になる。
「これが私ととらうま君との卒業式になるんだろうな」という予感もあった。
■以後は【山桜】とペアを組んでの練習となった。
一日ふた鞍なら【山桜】と他の馬になる。
扶助に敏感で身体が柔らかい彼は、自由自在に動いてくれる魔法のような馬だった。
さらに4%先生が下乗りをして下さって効率的なレッスンになるよう最大限の配慮をいただいた。
扶助に対する馬の反応がきちんとわかる状態になっているので、
馬をまとめる感覚とか、ハミを追っていく手綱の感じとか、
歩度の詰め伸ばし、収縮した状態などこれまでとは次元の違う学びをさせてもらった。
日々【山桜】と接していると、疲れてボーとしていたり
行くぞ行くぞとハイテンションだったり同じ馬でも微妙に違う。
また、私自身が馬に感謝しながらも段々依存心が芽生えて、些細なことに不安感を抱いたりと騎乗者としての心の揺れも経験できた。
馬の鼓動を聞く経験も忘れがたい。
大きな心臓。ハートとハートが響き合う。
■「競技会に出るのはレッスン10鞍分の価値がある」
「競技会の成績より、その日に備えて頑張ったことに意義がある」と
諸先輩に言われていた。
馬運車でいつもと違う場所に移動し、人も馬も正装をしてと
普段と違うハレの世界。
いうなれば成人式とか結婚式のような〈通過儀礼〉なのだ。
確かに競技会を終えて、自分のクラブが懐かしいわが家のように思えてきたし、
他者の視線にさらされて【山桜】と自分が一歩一歩を進めていく以外にないと
強烈に感じた。
4%先生に最後まで調整をしていただいた【山桜】はこれまでで最高の乗り心地であったが、準備馬場から本馬場へは誰も助けてはくれない。
馬に乗せていただくのではなく「馬に乗る」という自覚。
そのとき自分はどうするのかという何十回となく繰り返されるシュミレーション。
やり直しのきかない本番をどこまで精緻に組み立てられるのかが、問われる。
デビュー戦では「50% がとれればいいな」と密かに思っていたので、
今回は望み通りの結果になった。

■結局、とらうまって
「誰か何とかして」と思っている間は、肩にずしりとのしかかって身動きを封じてしまうものないかもしれない。
「負けてばかりいられない何とかしなくちゃ」と自分の足で立ちあがってみて、初めて何とかできそうなところとかちょっと軽くなりそうなタイミングとかが見えてくるんじゃないかな。
あいも変わらず下手だが、それでもここまで来れたことは
私の大きな財産になった。

 だって、挫折した経験のままに終わらせなかったのだもの。

 馬に乗っていてよかった、続けてよかった。

 私のとらうま君【山桜】を心から抱きしめて、ありがとう。



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CHIKA

はじめまして、もちぇさん。
実は2ヶ月くらい前から読ませていただいてました。
なかなかコメントを書く勇気がなく今まで読み逃げですみませんでしたm(_ _)m
競技会デビュー、おめでとうございます♪
素敵ですね!憧れますっ!!
競技会を経験されて、いろいろ思うところがあったのですね。
そして、もちぇさんにそんな過去があったなんて…とおどろきました。
私は今日29鞍目を乗ってきた乗馬ド初心者の三十路女です。
こんなへっぽこ鞍数ですがもう既に自分のどんくささに凹み気味です。
でも「人と比べてもしょうがない、馬と先生、周りの方々にはちょっと申し訳ないけど、自分のペースでゆっくりいこう」と決めました。
これからももちぇさんのブログ更新楽しみにしています☆
by CHIKA (2007-03-22 23:11) 

もちぇ

CHIKAさん、コメントありがとうございました♪
読み逃げ気にならさないで下さい。読んだもん勝ちですから。
競技会に出る前は「そんなっ私には無理です〜」と及び腰だったのに、終わった今では「楽しかった」と態度豹変です。
いいですよ〜正装して馬に乗ってひと時王侯貴族になった気分。
ぜひCHIKAさんも競技会を目指して頑張ってください。

CHIKAさんは馬に乗り始めたところなんですね。
どうぞご自分のペースを大切にされて、馬に乗り続けて下さい。
遠くから応援しています。
凹むことがあっても、あのやさしい馬の瞳に癒されますよ。
今後ともよろしくお願いいたします。
by もちぇ (2007-03-23 12:58) 

あき

こんばんわ、はじめまして。
CHIKAさんと同じく、私もかなり昔からBLOG愛読してました♪
すごくいろいろ為になるし、参考にさせていただいてました。

なにより競技会デビューおめでとうございますヾ(>▽<)ゞ
私もつい最近、埼玉県体でないかっていうお話いただいたんですけど、
未だ、自分に自身がないので、参加できないんですよね。
でも、もちぇさんを見習って、もっと練習してがんばろうって思います。

これからも更新楽しみにしています。
(LINKさせていただきました♪)
by あき (2007-03-25 22:20) 

もちぇ

あきさん、ご愛読&LINK ありがとうございます。
2級経路に合格されているのですから、あきさんはもう充分に外部競技会が楽しめると思いますよ。
私の場合、
口から心臓が飛び出す程の緊張感を収めてくれるのは「やることはすべてやった」という気持ちだけと練習を重ねましたが、練習すればする程わけわからん状態になってしまって…
【山桜】と先生とクラブの皆さんの助けがなければ、今の私はないと思いました。

あきさんの競技会チャレンジを応援してます。
仕事でお忙しいと思いますが、どうか頑張ってください。

***お詫び***
so-net blog と私のPCシステム環境の齟齬のせいで、新規リンクができない状態なんです、ごめんなさいませ。
by もちぇ (2007-03-26 09:32) 

Fenny

もちぇさん、こんにちは。
私は人馬転のトラウマを解消するのに1、2年かかりました。
落馬自慢・怪我自慢をする人を評価できないのは、自分が落馬も怪我もして、怪我が治るまで馬に乗れないという辛さを味わった挙句、乗ってみれば馬が挙動不審になる気配でフリーズするようになってしまい、今なら得たものもあったと言えるけれど、大きな回り道をしたと思うからです。
恐竜並の神経伝達系統の持ち主でありながら、大変な負けず嫌いですので、このままでは何かに負けた気がするという気持ちと、こんなに好きなことをやめたくないという気持ちだけを頼りに乗り続けることで、いつの間にかそのトラウマが解消されたような気がします。
おかげで、進捗を他人と比べることの愚、馬をよく見て感じようとする気持ち、空元気でも強い気持ちを持つべき時があることに気がつくことができたと思います。
書いていることは偉そうだと思いますが、内情はヘタレな自分ですので、もちぇさんの記事は1つ1つが身にしみます。
これからも更新楽しみにしています。
最後になりましたが、競技デビューおめでとうございます。
競技会は出た者勝ち、楽しんだ者勝ちです。真剣でさえあれば、得るものがないことなどありません。人生で真剣に楽しめる事があるのは、とても幸せなことですよね!
by Fenny (2007-03-26 13:23) 

もちぇ

Fenny さんもトラウマを乗り越える経験をされたのですね…
私が、Fenny さんのブログに心引かれたのは、
>『進捗を他人と比べることの愚、馬をよく見て感じようとする気持ち、空元気でも強い気持ちを持つべき時があることに気がつくことができた』乗馬人としての強さが、自らのゴールと重なっていたからなのかもしれません。

デビューを言祝いでいただき、ありがとうございます。
人生には負けたままではいけない時がある でもそれは、
人と競い合うことではなくて、自分の弱さや未来の不確実さとの闘いなんだと実感しました。
今こうやって、乗馬の厳しさ楽しさをFenny さんと分かち合えることができて、とっても幸せです。心から感謝申し上げます。
by もちぇ (2007-03-26 21:21) 

ニタコ

恐怖感は、やっぱり付き物ですね。
焦らない事といつも心に念じています。
なにかいつもと違うときは、早足や、なみあしに落として
自分の姿勢や、踵を落としているかとか
基本基本!!と思ってやり直しをします。
駆足せずに終わったりもします。
恐怖感が強い時は絶対体が固まって馬に付いていけないですもん。
地道にがんばります。。
by ニタコ (2007-04-17 22:31) 

もちぇ

ニタコさん、お久しぶりでございます。
自前の乗馬クラブをお持ちでも『乗馬の怖さ』とお友達でいらっしゃるんですか?
どんな状況の馬でもすんなり手なずけてしまうというイメージがあったので、びっくりです。
私自身今でも、恐怖感がなくなったとは言い切れないんですよ〜
ただ昔の私なら落ちてたかも…とか、2年前だったらフリーズして途中退場しただろう…といった対処できる状況が増えてきたことは事実なんです。
基本的な運動しかやってないんですが、それでいいのかも。
「あの人、基礎がなってないよね〜」とか、
「力任せに馬を動かしているだけ」
「レッスン終わると馬がカリカリしてる」なんて、
言われるの嫌ですもん。
馬と人がベストバランスで楽しく運動できることを目標に、私も地道にがんばります。
ニタコさんも、馬に犬にお子さんに大変だと思いますが一緒に精進のいたしましょう。
by もちぇ (2007-04-18 18:12) 

冬月まりん

もちぇさん、お久しぶりです。引っ越ししてがらっと生活が変わり、他の方のblogを拝見している暇がありませんでしたが、やっと生活も落ち着いてきました。競技会デビュー、おめでとうございます。私もいつか競技会に出られるように、歩みは遅くとも一歩一歩上達して行ければと思います。ずーっと暗くて長いトンネルを手探りで進んでいるような状態ですが、もちぇさんの頑張りに倣って、諦めずに乗り続けます。
by 冬月まりん (2007-05-05 17:43) 

もちぇ

お久しぶりです。
お元気でいらっしゃいましたか?
乗馬関連の記事がなくて心配しておりましたら、なんと!新天地で本格的な修行に入られたご様子。
まりんさん、凄すぎます!
そこまで乗馬に駆り立てるものって何なのでしょうか。
私の場合「ここであきらめたら挫折になる」という〈人生の敗者になりたくない思い〉が原動力でした。
こうなると〈より高く〉を目指すまりんさんの日々から目が離せなくなりました。
身体と心の管理に気をつけて頑張って下さいね。
まりんさんの学ばれたことを少しは私どもにも分けてくださいませ、遠くからではありますが応援しております。
by もちぇ (2007-05-08 09:32) 

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